クロシオチドリ

長崎県平戸島のウチョウランで、開花期の早い一群がこの名前で呼ばれます。出始めの頃のクロシオチドリは、草丈が低くて花の大きいウチョウランという雰囲気でした。最近見掛けるようになったのは、全体的に大柄で耐暑性の高い個体が多いように思います。

山梨にもウチョウランはありますが、現在残っている自生地はどこも標高が高い場所のもので、栽培が難しいと聞きます。中学生の頃に見に行った父方の実家に近い山は、低山帯だったのでまばらに生えるイワヒバの根元や、カヤツリグサの株立ちの中で咲いていました。側にはジガバチソウやセッコクがあったのも覚えています。

クロシオチドリ・白地斑紋花

イワチドリがほとんど終了を迎えまして、代わってクロシオチドリとクロカミランが咲き始めました。ウチョウランも早いものは咲いています。昨年より舌のピンクが濃く出ているクロシオチドリの白地斑紋花です。相変わらず草姿の割に大きな花を咲かせてくれます。

クロシオチドリというのは、ウチョウランの地域個体群の一つと考えられていて、学名上はウチョウランと分けられていません。同様の個体群に、ツルギチドリ、テバコチドリ、小豆島ウチョウラン、ガンコラン、サイカイチドリといったものが有りましたが、現在も区別されて残っているものは小豆島ウチョウランくらいかもしれません。

その点クロシオチドリは、個体数が多かったのかいち早く保存会が発足したおかげか、今日でも多くの特徴有る個体が維持されています。早咲き、花が大きい、暑さに強いなど良い性質が多いので、今後も長く作り続けられて欲しいです。

クロシオチドリ・白地斑紋花

クロシオチドリはウチョウランの地域変異に分類される、長崎県平戸島産のウチョウランです。分類上はクロカミランやサツマチドリのように変種として扱われていませんが、趣味家は早咲きであることや、草姿の割に大型の花が咲くことから区別していました。

小豆島ウチョウランのように背が低く咲くものが多いのですが、この個体は並のウチョウランくらいに背が伸びて、大型の花を咲かせます。濃色花の多いクロシオチドリには珍しい、淡色系の佳品ではないかと思います。このようなはなが自然に咲いているというのは驚きですね。