ウバユリの名前の由来

ウバユリという植物があります。ユリじゃないユリ、というか狭義のユリ科に残されたユリ科の一つで、花を見るとちょっとひしゃげてしまったユリの花、という雰囲気があります。花びらの内側に暗褐色の斑点が入るところや、あまり開かないところなどはユリと似ていない点でしょうか。
ウバユリという名前の由来として、「花の頃には葉が枯れていることが多く、葉がない(歯がない)様子を姥婆に見立てて名前が付いた」という説明が、大手を振っているのですが……私の中では、この説にはとても違和感があります。

ウバユリの葉がこれです。ユリ科にはあまり見えない、タデの仲間かな? みたいな見た目と色合いをしていますが、主脈に赤色が入るタイプ以外に全体的に緑一色のものもあったりと、個体差も多いようです。生息地は開けた雑木林なので、日射しの当たり方で赤味が出たり出なかったりもありそうですが、観察している範囲だと緑一色のものは緑のままが多いようです。
花が咲くのは7~8月と真夏の暑い時期で、地際に展開した大きな葉も夏草に埋もれて見えないことが多いです。完全に枯れてしまっていない場合が多く、虫食いだらけで黄色くなりながら残っていたり、丸々一枚青々とした葉が付いていることも多いです。
「葉(歯)がない」から姥婆、という言葉遊びのような名付けはままあるようですが、例えば学生時代に先輩に教えてもらったシオガマギクの名前の由来、「浜(葉まで)で美しいものは塩釜だ」という話にも違和感を覚えたのですが、こちらの話は
こちらのブログでとても興味深い考察がされています。私も「なるほど!」と思いましたので、これが正解なのかなぁと思いました。
ウバユリの花を正面から見ていて、ふと「入れ歯を外したお爺さんやお婆さんの口元みたいだ」と思ったのが、今回の記事を書いた切っ掛けです。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは美人を例える表現ですが、もともと美しい女性をユリの花に例える文化的な背景がありました。それなら、シミやソバカスがあってしわくちゃになった女性を表現するには……と思い付いたときに、ウバユリってもしかして? と。
それにもう一つ、ウバユリやオオウバユリの球根は食用にされます。しかし収穫の時期は花が咲く前、つまり青々とした立派な葉が付いた状態で収穫されます。花を咲かせると球根に蓄えた栄養を消耗してしまうので、見た目も栄養価も下がるのでつぼみが出る前が収穫期なのだそうです。若く軟らかい葉も食べられないことはないそうですが、何度も煮こぼさないといけないほど苦味が強いので、好んで食べる人は少ないとか。
それらを考えても、花の時期に葉がないことに着目するって、あまり無い状況じゃないかなぁというのが、私の中の違和感です。逆に花の時期に葉がない身近な植物は他にもあって、ことさらウバユリだけ注目されるのかな? と思いました。
さてさて、本当の由来はいつか分かるときが来るのでしょうか。
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