写真,野草

ノアザミ

日本で最も一般的なアザミと言えばこのノアザミ。名前や見た目の似ているノハラアザミとは、総苞という花の付け根の小花を束ねている部分が、粘つき感があるか、開いてトゲトゲしているかでかんたんに見分けられます。写真のノアザミは総苞は開かずにベタベタしたさわり心地です。

アザミの花というと上を向いて咲いている姿を想像するのですが、本来のアザミ属で真上を向くのはむしろ少数派で、ほとんどの種類は横向きや斜め下向きになります。それも見分けるポイントかもしれません。アザミに似た上向きの花にはタムラソウやトウヒレンの仲間があります。標高の高い山の中で見掛けるアザミに似た花は、アザミよりトウヒレンの仲間が多いと思います。

ヤマゴボウの名前で漬物にされるのは、ノアザミやモリアザミの根っこが多いそうです。ゴボウ程太くはならないけど柔らかくて美味しいですね。

写真,野草

イタドリ

山梨や長野のあたりでは、スカンポやスイカンポと呼んで、春の芽出しのまだ茎や葉が赤紫色の残る頃に、山菜として利用したりします。秋の紅葉の美しさも相まって、宿根になる雑草の中では割と見逃されることの多い植物です。酸っぱいのはシュウ酸のせいだというのはよく知られていますが、酸味成分はクエン酸やリンゴ酸も持っているので、全体的に酸っぱいもの集めた植物だなぁとおもしろく感じます。

シュウ酸は多食すると結石の原因になりやすいので、野菜のようにどっさり食べるのはおすすめできない山菜です。ただ、シュウ酸は水に溶けやすい性質のため、茹でこぼして水にさらす工程をしっかりやると、ほとんど抜けてしまうそうです。生でかじるとかなり酸っぱいのに、茹でておひたしで食べるとちょうど良い酸味と感じるのは、クエン酸やリンゴ酸がいい感じで残るためかもしれません。

花の感じはタデ科の中でもナツユキカズラやソバに似た雰囲気で、いわゆるトラノオのような花にはなりません。ベニイタドリという淡紅色の花を咲かせる種類もあるので、観賞を目的にするならベニイタドリの方が良さそうです。

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オニグルミ

いわゆる胡桃の実を付ける、日本原産のクルミです。クルミの仲間はナガグルミ(信濃グルミ)、ヒメグルミという種類もあるそうですが、セイヨウグルミ(ウォルナット)のほうが有名です。写真の黄緑色の実はまだまだ育ち始めの若い状態で、梅で言うと青梅の段階です。

勤務先の周辺にはこの樹がたくさん生えているので、秋になったら落ちた胡桃を拾って帰って美味しく頂いたりしています。川沿いなど水が近い環境に生えているイメージですが、草姿の似た樹木でサワグルミやノグルミという種類がありますが、この二種はクルミ属ではないので胡桃の実は成りません。

サワグルミはアレロパシー(他感作用)の教材として、知っている人もいるかもしれません。雨が降って葉先からしたたり落ちる雫に、他の植物の生育を阻害する成分が含まれます。サワグルミの林床には他の植物の実生などが育たず、サワグルミの落ち葉だけが積もった寂しい植生になってしまいます。

オニグルミはそんな事はないので、増えてくれるならオニグルミがいいなぁと思います。

写真,野草

バイカウツギ「スノーファンタジー」

香りのあるバイカウツギです。半八重の花と一重の花が混じるので「スノーファンタジー」じゃないかと思いますが、違うかもしれません。かなり大きな立派な樹に育ってたくさんの花を咲かせていました。いくつかあるウツギの名前を持つ植物の中で、バイカウツギはあまり有名ではない地味な存在かもしれません。

大輪の「ベル・エトワール」という品種は香りが強くて、公園樹や庭木で人気があります。完全な八重咲き種や斑入り、黄金葉の品種もあるのですがあまり見掛けることはありません。梅雨の初めの頃から咲き始めるのでアジサイが目立つ時期。どうしても白一色のバイカウツギは華やかさに欠けるのでしょうか。ミツバチやハナムグリには人気があるんですけどね。

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オオマムシグサ

この仲間の同定は本当に難しくて、特にセラータム節(マムシグサの仲間)は個体変異も大きくて見分けるのが難しいです。分布域も近年調査が進んで今までの図鑑だと無かったところとか、新規の自生地が見付かることも多くて場所での特定もあてに出来ません。写真のマムシグサは葉の様子や草丈が2m近いサイズなのでオオマムシグサと判断しましたが…

日本のテンナンショウ属の図鑑として、「日本産テンナンショウ属図鑑」という写真図鑑があります。専門書大好きの北隆館から刊行されていて、今のところこの図鑑が最高峰じゃないかと思います。自生地の写真を中心にしているので、生育環境も分かるよい図鑑です。説明文も紛らわしい種類の区別点に言及していて、同定のための図鑑としても良いものです。

まーなかなかに手を出しにくいお値段なんですが、自分は買って良かったと満足しています。