サイハイランの開花

つぼみの状態を前に記事にしていたサイハイラン、およそ10日できれいに咲きそろいました。花被片は薄いピンクベースに細かな紫褐色の斑点が入るので、濁ったようなピンク色に見えると思います。梅雨入りの頃に暗い林床で咲く様子は、一見すると腐生蘭の一種のように思われますが、花茎の付け根には一枚か稀に二枚の葉を付けています。

花は下向きで側萼片は開きますが、側花弁も唇弁も細くてあまり開かないので、ランの花にしては地味な印象です。その代わりといいますか、唇弁は濃い紅色と白色で派手に染め上げていて、全体的にナチュラルメイクで、差し色が派手なお化粧をした人、みたいな感じを受けました。
同属(Cremastra)にモイワランという完全な腐生生活を送る種や、トクシマサイハイランと呼ばれる全体的に濃い紅色の花を付ける種類が知られています。モイワランとトクシマサイハイランは、同じ種ではないかと考える人もいて、小さな葉を一枚付けたり付けなかったり、年によって違うという話です。
おそらくですがモイワランの生育ステージによって、従属栄養から独立栄養へ変わっていくのではないかと考えています。サイハイランも小さな株は葉が小型で、根の状態が腐生蘭(菌従属栄養)っぽい様子で、大きく育つうちに立派な葉を付けて根もエビネのようなしっかりした根になります。
ランは元々種子からの発芽の際には、菌従属栄養状態で生育が進み、バルブを形成して根と葉を出して光合成を行う独立栄養状態になります。腐生蘭は後半の過程に移らない、最後まで菌従属栄養のまま生育するランですが、サイハイランを見ていると独り立ちするまで時間が掛かる、手の掛かる子供みたいな感じがします。
十分な独立栄養状態になっているサイハイランは、エビネと同じような育て方で育てられます。もしかしたら菌従属状態で十分な養分が得られるなら、光合成をしなくて済むから葉が小さくなったり、葉を付けなくなるというステージ逆行の生育をする個体もあるのかもしれません。サイハイランはとても面白いランだと思います。
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