カイコバイモを見に行きました
十年くらい前に自生地を探していた時期があったのですが、人づてに聞いた場所や論文から知った場所では見つけることができずにいました。最近になってネットで検索したところ、以前は無かった情報がワラワラと。その中の一カ所は時期は違うものの、二度行ったことのある山でした。
カイコバイモ(Fritillaria kaiensis)は東京、山梨、静岡の三県だけに分布する珍しいコバイモです。分布すると言っても局所分布なので、花の時期に自生条件に合った山林を探せば見つかるという花ではありません。確実に自生地を知った上で、短い開花期間に合わせて訪れないと出会えない花です。
新潟でコシノコバイモ、鈴鹿山系の藤原岳でミノコバイモを見ていましたが、カイコバイモは現物を見たことの無い植物です。自生地で咲いている株に出会えるかどうか、あまり自信はありませんでした。わたし以上に野草好きの父を誘って、二人で探しに行ってみました。
最初に見付けられたのはつぼみの状態のこの株です。周囲には他に見つからず、一本だけぽつんとつぼみを上げていました。コシノコバイモより高さがあり、ミノコバイモより花が小さそうだと感じました。山頂近くの登りで見つけたのですが、その後は何度か探してみるものの見つからずじまい。カタクリもつぼみがちらほらで時期的に早いのか、つぼみだけでも見られたことに満足して下山することにしました。
登りでは開いていなかったキクザキイチゲも、午後の日差しが当たるようになってきれいに咲いてくれました。山梨ではイチリンソウやアズマイチゲ、ニリンソウはわりとどこでも見られるのですが、キクザキイチゲは珍しいと思います。最初はイチリンソウと勘違いしていて、妙に花の小さなイチリンソウだなぁ……などと馬鹿なことを考えていました。
花びらの数を見れば一目瞭然なのになんとも情けない勘違いをしたものです。写真を撮っていてキクザキイチゲという花があったことを思い出しました。
下山も後半でそろそろ車を駐めた場所が見えてくるだろうと考えていた時、獣道にしては妙にはっきりした踏み跡が気になりました。先の方に緑の新芽が見えましたがユキザサのようです。父に少し待ってもらいその先まで足を伸ばしてふと上を見上げたら……ありました! 待望の咲いているカイコバイモでした。
しかも一カ所で5株も花を咲かせています。株の周りにも実生苗がたくさん生えていて、これはなかなかの集団です。急いで父を呼びじっくりと花を見せてもらいました。
コシノコバイモやミノコバイモと比べると、ふっくらして丸い感じの花に見えます。形態的には遠く離れたイズモコバイモに近い種類ではないかと言われているようです。外側のまだら模様は薄い色ですが、花の内側には少し濃いめの模様が入っていました。
フリティラリア属の花にはこんな感じで模様の入る、メレアグリスというヨーロッパ産の種類があります。園芸的に栽培増殖されていて、秋植え球根で販売されていますが、草丈はもっと伸びて大きくなるものです。カイコバイモは半分程のサイズ感でしょうか。
目が慣れたおかげかその後の下りでもいくつか見つけることができました。車に戻る寸前に登り始めに気づかなかった二株咲きのものがあって、なんとも情けない無力感を感じました。やはり実物を見ているかどうかで探せる確率はかなり変わりますね。
ほんとうにすぐそこの足下にあっても、全く気づかず見落としていましたから。周囲のカタクリに気をとられていたようです。
他にはスミレの仲間も咲いていました。日陰になる場所にはヨゴレネコノメが咲いていましたが、これも午前中には気づきませんでした。午後になって日差しが入るようになったら目に付くようになったので、見つけられて良かったです。
夢にまで見た、と表現していいくらいに憧れていたカイコバイモ。一度で見つけられると思っていなかったので、とてもうれしい探索になりました。父にも喜んでもらえたようですし、久しぶりの親孝行ができたと思います。また来年、今度は知り合いを何人か連れて見に来たいと思いました。
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